ターンキーPCB製造 vs 部分委託:最適な製造モデルの選び方
製造戦略

ターンキーPCB製造 vs 部分委託:最適な製造モデルの選び方

ターンキー、部分委託、コンサインメント方式のメリット・デメリットを徹底比較。Box Build、筐体組立まで含めた製造モデルの選定ガイド。

Hommer Zhao

Hommer Zhao

創業者・技術専門家

2024年12月15日
読了時間 10分

「ターンキーとコンサインメント、どちらを選ぶべきですか?」 ——これは、新しいお客様から必ず受ける質問です。 答えは「ケースバイケース」なのですが、それでは参考になりませんよね。

この記事では、ターンキー、コンサインメント、そしてその中間である部分ターンキーの3つの製造モデルを徹底比較。 それぞれのメリット・デメリット、コスト構造、そしてあなたの状況に最適なモデルの選び方を解説します。

Hommer Zhao

"製造モデルの選択は、単なるコスト比較ではありません。御社のリソース、リスク許容度、製品特性を総合的に考慮する必要があります。この選択を誤ると、後々大きな問題になることも。"

500社以上との取引経験から

Hommer Zhao

創業者・技術専門家

3つの製造委託モデル

製造委託モデルの比較図

3つの製造委託モデルの概念図

PCB実装を外部委託する際、 大きく3つのモデルがあります。簡単に言えば、「誰が部品を調達するか」の違いです。

モデル部品調達責任所在一言で言うと
ターンキーEMS会社EMS会社全部お任せ
コンサインメント発注者発注者部品は自分で用意
部分ターンキー両者で分担分担いいとこ取り

ターンキー製造とは

ターンキー製造プロセス

ターンキー製造:BOMから完成品まで一貫対応

ターンキーの仕組み

「ターンキー(Turnkey)」とは、文字通り「鍵を回すだけ」で完成品が手に入るサービスです。 お客様がBOM(部品表)とガーバーデータを提供すれば、 EMS会社がすべての部品調達、PCB製造、実装、検査を一括で行います。

ターンキーのメリット

  • 調達業務の削減:数百点の部品を自社で調達する手間が不要
  • 在庫リスクの移転:余剰在庫はEMS会社が負担
  • キャッシュフロー改善:完成品支払いのため先行投資が不要
  • 責任の一元化:品質問題の窓口がEMS会社に一本化
  • 専門知識の活用:部品代替提案、EOL対応をEMSに任せられる

ターンキーのデメリット

  • コスト上乗せ:EMS会社の調達マージンが加算される
  • コントロール低下:部品選定・サプライヤー選択の自由度が低い
  • 透明性の課題:部品の実コストが見えにくい場合がある

ターンキーが向いているケース

調達部門のリソースが限られている企業、新製品立ち上げでスピードを優先したい場合、 または海外部品調達のノウハウがない場合に特に有効です。 スタートアップ企業の多くがターンキーを選択しています。

コンサインメント(支給品)製造

コンサインメントの仕組み

コンサインメント方式では、発注者(お客様)がすべての部品を自社で調達し、 EMS会社に支給します。EMS会社は純粋に「実装サービス」のみを提供します。

コンサインメントのメリット

  • コスト透明性:部品コストを完全に把握・管理できる
  • サプライヤー選択の自由:既存の調達ネットワークを活用
  • 特殊部品への対応:入手困難な部品、独自仕様部品の調達
  • ボリュームディスカウント:複数製品で部品を共通化し、まとめ買い可能

コンサインメントのデメリット

  • 調達業務の負荷:すべての部品調達を自社で行う必要
  • 在庫リスク:余剰在庫、EOL部品のリスクを自社が負担
  • 部品欠品リスク:1点でも欠品すると生産が止まる
  • 物流コスト:部品をEMS会社に送る物流費用と手間
  • 品質責任の複雑化:支給品起因の不良は責任が曖昧になりがち
Hommer Zhao

"コンサインメントで最も多いトラブルは「部品の欠品」です。100点の部品のうち99点が揃っても、1点足りなければ生産は止まります。この1点のために全体のスケジュールが狂うことが珍しくありません。"

Hommer Zhao

創業者・技術専門家

部分ターンキー(ハイブリッド)

部分ターンキーとは

部分ターンキー(Partial Turnkey)は、ターンキーとコンサインメントの中間モデルです。 一部の部品はEMS会社が調達し、特定の部品はお客様が支給します。 「いいとこ取り」ができる柔軟なモデルです。

よくある分担パターン

部品カテゴリEMS調達お客様支給理由
汎用受動部品調達効率が良い
汎用ICEMS在庫を活用
特殊・カスタム部品独自仕様、入手困難
キーコンポーネント価格交渉力、戦略部品
PCB基板一貫製造のメリット

部分ターンキーのメリット

  • 柔軟性:製品や状況に応じて最適な分担を設計
  • コスト最適化:調達力を活かせる部分は自社、それ以外はEMS
  • リスク分散:調達リスクを両者で分担

部分ターンキーの注意点

分担の境界を明確にしておかないと、責任の所在が曖昧になるリスクがあります。 どの部品をどちらが調達するか、欠品時の責任はどうするか、 事前に書面で合意しておくことが重要です。

3モデル徹底比較

比較項目ターンキー部分ターンキーコンサインメント
調達業務負荷◎ 低い○ 中程度× 高い
部品コスト透明性△ 低い○ 中程度◎ 高い
在庫リスク◎ EMS負担○ 分担× 発注者負担
サプライヤー選択自由度△ 低い○ 中程度◎ 高い
品質責任◎ 明確○ やや複雑△ 複雑
リードタイム○ 安定○ 安定△ 欠品リスク
総コスト△ やや高い○ 中程度○ 低〜中
管理の複雑さ◎ シンプル○ 中程度× 複雑

Box Buildへの拡張

ターンキーモデルを採用する場合、PCB実装だけでなく、Box Build(完成品組立)まで 拡張することで、さらなるメリットが得られます。

Box Buildで追加できる工程

  • ワイヤーハーネスの製造・接続
  • 筐体組立(基板の筐体への組込み)
  • ソフトウェア書込み・設定
  • 機能検査(FCT)、エージング試験
  • 梱包、個装箱への封入、出荷
Hommer Zhao

"当社のお客様の約60%が、最初はPCB実装だけのご依頼から始まり、その後Box Buildまで拡張されています。サプライヤー管理の手間が減り、中間在庫も削減できるため、一度体験すると元に戻れないとおっしゃいます。"

Hommer Zhao

創業者・技術専門家

選定基準:どのモデルを選ぶべきか

ターンキーを選ぶべき場合

  • 調達部門のリソースが限られている
  • 新規製品でスピードを優先したい
  • 海外調達のノウハウがない
  • 在庫リスクを取りたくない
  • スタートアップ・中小企業

コンサインメントを選ぶべき場合

  • 調達部門が充実している
  • 特殊な部品を多く使用する
  • 既存サプライヤーとの関係を維持したい
  • 大量生産で部品コストを最適化したい
  • 部品コストの完全な透明性が必要

部分ターンキーを選ぶべき場合

  • 一部に特殊・戦略部品がある
  • 汎用部品は外部調達で効率化したい
  • 段階的にターンキーに移行したい
  • リスクを分散したい

コスト構造の違い

「ターンキーは高い」というイメージがありますが、隠れたコストを含めると 必ずしもそうとは言えません。総所有コスト(TCO)で比較することが重要です。

コスト要素ターンキーコンサインメント
部品価格やや高い(マージン込み)直接コスト
調達人件費なし自社負担
在庫保管費なし自社負担
余剰在庫リスクなし自社負担
部品輸送費なし自社負担
EOL対応費含まれる自社負担
欠品による遅延リスク低リスク高

総所有コスト(TCO)の考え方

部品価格だけを見るとコンサインメントが安く見えますが、 調達担当者の人件費、在庫保管費、EOL対応費、欠品による機会損失などを含めると、 ターンキーの方が総コストで有利になるケースも多いです。 特に中小企業では、間接費の影響が大きくなります。

まとめ

3つの製造委託モデルについて解説してきました。最後にポイントを整理します:

  • ターンキー:調達負荷を下げたい、リスクを移転したい場合
  • コンサインメント:コスト透明性を重視、調達力がある場合
  • 部分ターンキー:柔軟性を求める、段階的に移行したい場合

どのモデルが最適かは、御社の状況によって異なります。 当社では、お客様のニーズに応じて3つすべてのモデルに対応しています。 まずはお気軽にご相談ください。パートナー選定の詳細についてはPCB実装パートナー選定の10のチェックポイントもご確認ください。 ワイヤーハーネスの委託製造については業界別ワイヤーハーネスガイドが参考になります。

Hommer Zhao

"最近は、ターンキーでスタートし、量産が安定したら部分ターンキーに移行するお客様が増えています。最初から完璧なモデルを選ぶ必要はありません。状況に応じて柔軟に調整していきましょう。"

Hommer Zhao

創業者・技術専門家
ターンキー受託製造EMSBox Build製造委託
Hommer Zhao

Hommer Zhao

CEO & Founder / 創業者・技術専門家

20年以上のPCB・EMS業界経験を持つ創業者兼技術専門家。WellPCBグループの創業者として、中国・フィリピンの生産拠点でPCB製造、実装、ワイヤーハーネス、Box Build組立までの一貫製造体制を構築。日本市場向けの品質管理体制の確立に注力。ISO 9001、IATF 16949認証取得を主導し、自動車・医療機器品質の製造を実現。

電子機器製造業界20年以上の実務経験WellPCBグループ創業者ISO 9001 / IATF 16949品質システム構築日中両国での製造拠点運営

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