ワイヤーハーネスは電子機器の「神経系統」とも呼ばれる重要なコンポーネントです。 しかし、業界によって求められる品質要件、規格、材料は大きく異なります。 自動車、医療機器、産業機器——それぞれの業界で「正解」は違うのです。
この記事では、3つの主要業界におけるワイヤーハーネスの要件を徹底比較。 IATF 16949、ISO 13485、IPC/WHMA-A-620といった規格の違いから、 材料選定、製造プロセスまで、実務で役立つ知識をまとめました。

"ワイヤーハーネスは目立たない存在ですが、品質問題が起きると製品全体の信頼性に直結します。特に自動車と医療機器では、文字通り人命に関わるため、妥協は許されません。"
500以上のハーネスプロジェクトを手がけた経験から
— Hommer Zhao
創業者・技術専門家ワイヤーハーネスの基礎知識

ワイヤーハーネスの主要構成要素
ワイヤーハーネスとは?
ワイヤーハーネスとは、複数の電線やケーブルを束ねて、コネクタや端子を取り付けた配線アセンブリです。 単に「電線を束ねたもの」ではなく、以下の要素で構成されています:
- 電線・ケーブル:信号や電力を伝送する導体
- コネクタ:着脱可能な接続部品
- 端子(ターミナル):電線とコネクタを接続する金属部品
- 保護材:チューブ、テープ、コルゲートなど
- 固定材:クランプ、タイラップ、グロメットなど
ケーブルアセンブリとの違い
よく混同される「ケーブルアセンブリ」との違いも整理しておきましょう。 ケーブルアセンブリは一般的に1本または少数のケーブルにコネクタを取り付けたシンプルな構造を指し、 ワイヤーハーネスはより複雑で、多数の電線を束ねた大規模な配線システムを指すことが多いです。
自動車用ハーネス

車両の電装系統を支える自動車用ハーネス
自動車ハーネスの特徴
現代の自動車には、全長数kmにも及ぶワイヤーハーネスが搭載されています。 ADAS(先進運転支援システム)、EV化、コネクテッドカーの普及により、 車載ハーネスの複雑さと重要性はますます増しています。
必須規格:IATF 16949
自動車業界向けハーネスを供給するには、IATF 16949認証が事実上の必須条件です。 これはISO 9001をベースに、自動車産業固有の要件を追加した品質マネジメントシステム規格です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| PPAP | 量産開始前の製品・プロセス承認手順 |
| APQP | 先行製品品質計画 |
| FMEA | 故障モード影響解析 |
| MSA | 測定システム解析 |
| SPC | 統計的工程管理 |
車載ハーネスの過酷な環境条件
- 温度:-40℃〜+125℃(エンジンルームでは150℃以上も)
- 振動:10年以上の連続振動への耐久性
- 耐油・耐薬品:ガソリン、オイル、冷却液への耐性
- 耐水:水没・高圧洗車への対応
- EMC:電磁ノイズの発生抑制と耐性

"車載ハーネスで最も怖いのは、量産後の不具合です。リコールになれば、数百万台規模の回収・交換が発生します。だからこそ、PPAPでの事前検証を徹底的に行います。"
— Hommer Zhao
創業者・技術専門家医療機器用ハーネス

クリーンルーム製造の医療機器用ハーネス
医療ハーネスの特徴
医療機器用ハーネスは、患者の生命に直接関わる可能性があるため、 最も厳格な品質管理が求められる分野の一つです。 診断装置、治療機器、生命維持装置など、用途に応じた厳密な要件が存在します。
必須規格:ISO 13485
医療機器製造にはISO 13485認証が必須です。 これは医療機器に特化した品質マネジメントシステム規格で、 規制要件への適合と製品の安全性・有効性を確保するための要件を定めています。
医療ハーネスの固有要件
| 要件 | 詳細 |
|---|---|
| 生体適合性 | 人体に接触する可能性がある場合、ISO 10993準拠の材料選定 |
| 滅菌対応 | ETO滅菌、γ線滅菌、オートクレーブに耐える材料 |
| クリーンルーム | クラス10,000以下での製造環境 |
| 完全トレーサビリティ | 材料ロット〜出荷まで100%追跡可能 |
| リスク管理 | ISO 14971に基づくリスク分析と文書化 |
医療機器ハーネスの落とし穴
医療機器向けハーネスでよくある失敗は、試作段階で一般材料を使い、 量産時に医療グレード材料に変更しようとすること。 材料変更はバリデーションのやり直しが必要になり、大幅な遅延とコスト増を招きます。 最初から適切な材料を選定してください。
IPC Class 3品質
医療機器用ハーネスは、IPC/WHMA-A-620のClass 3(最高品質等級)に準拠して製造されます。 Class 3は、継続的な高性能、故障が許容されない製品、過酷な環境での運用が求められる製品向けの基準です。
産業機器用ハーネス

耐環境性を重視した産業機器用ハーネス
産業ハーネスの特徴
工作機械、ロボット、FA機器、制御盤など、産業機器向けハーネスは 工場環境の過酷な条件に耐える設計が求められます。 油、切削液、粉塵、高温、振動——これらすべてに対応する必要があります。
産業ハーネスの重要要件
- 耐油・耐薬品:切削油、潤滑油、溶剤への耐性
- 耐熱:200℃以上の高温環境対応
- 高屈曲:ロボットアーム向け1000万回以上の屈曲寿命
- EMC対策:シールドケーブルによるノイズ対策
- 大電流対応:モーター駆動用の動力線
ロボット用ケーブルの特殊要件
産業用ロボットのアーム部分に使用されるケーブルは、 連続的な曲げ動作に耐える特殊な構造が必要です。 igus、LAPP等の高屈曲ケーブルを使用し、適切な曲げ半径を確保することが重要です。

"産業用ハーネスで見落としがちなのがEMC対策です。インバータやサーボモーターからのノイズがセンサー信号を乱し、誤動作を起こすケースが非常に多い。シールドの接地処理を正しく行うことが肝心です。"
— Hommer Zhao
創業者・技術専門家業界別要件比較
3つの業界の要件を一覧で比較します。自社製品がどの業界向けかを確認し、必要な要件を把握してください。
| 項目 | 自動車 | 医療機器 | 産業機器 |
|---|---|---|---|
| 必須認証 | IATF 16949 | ISO 13485 | ISO 9001 |
| 品質等級 | IPC Class 2/3 | IPC Class 3 | IPC Class 2 |
| トレーサビリティ | ○ 高い | ◎ 完全 | △ 標準 |
| 環境試験 | ◎ 厳格 | ○ 中程度 | ○ 中程度 |
| 製造環境 | 一般製造 | クリーンルーム | 一般製造 |
| 承認プロセス | PPAP | バリデーション | 標準 |
| 変更管理 | ◎ 厳格 | ◎ 厳格 | ○ 標準 |
| 供給期間 | 10年以上 | 10年以上 | 5〜10年 |
品質規格と認証
IPC/WHMA-A-620とは?
IPC/WHMA-A-620は、ケーブル・ワイヤーハーネス アセンブリの 品質要件と受入基準を定めた国際規格です。3つのクラスが定義されています:
| クラス | 対象 | 品質レベル |
|---|---|---|
| Class 1 | 一般民生機器 | 標準 |
| Class 2 | 専用サービス機器 | 高い |
| Class 3 | 高信頼性機器 | 最高 |
Class選定のポイント
自動車向けは通常Class 2以上、医療機器はClass 3が標準です。 産業機器は用途に応じてClass 2が多いですが、人命に関わる安全機器ではClass 3を採用することもあります。 コストと品質のバランスを考慮して選定してください。
製造プロセス
ワイヤーハーネスの製造は、以下の工程で進められます:
- 設計・図面作成
配線図、組立図、BOMの作成。DFM(製造性考慮設計)レビュー
- 材料調達
電線、コネクタ、端子、保護材の手配
- 電線加工
切断、被覆剥離、マーキング
- 端子圧着
圧着機による端子取付、引張試験
- コネクタ挿入
端子のコネクタハウジングへの挿入
- 組立・結束
テープ巻き、チューブ挿入、結束処理
- 検査
導通検査、耐圧検査、外観検査
サプライヤー選定のポイント
ワイヤーハーネスのサプライヤーを選ぶ際は、以下のポイントを確認してください:
- 必要な認証を保有しているか(IATF 16949、ISO 13485等)
- 対象業界での実績があるか(類似製品の製造経験)
- 品質管理体制は十分か(検査設備、トレーサビリティ)
- 技術サポートは受けられるか(設計レビュー、VE提案)
- 供給の継続性は確保できるか(財務安定性、BCP対策)
まとめ
業界別のワイヤーハーネス要件について解説してきました。最後にポイントを整理します:
- 自動車向け:IATF 16949必須、過酷な環境条件、PPAP承認
- 医療機器向け:ISO 13485必須、クリーンルーム製造、完全トレーサビリティ
- 産業機器向け:耐環境性、高屈曲対応、EMC対策
業界固有の要件を理解し、適切なサプライヤーと協力することが、 高品質なワイヤーハーネスを安定供給するための鍵です。 製造委託モデルの選択についてはターンキー vs コンサインメント比較を、 PCB部分のサプライヤー選びにはパートナー選定チェックリストもご活用ください。

"当社では、3つの業界すべてに対応できる製造体制を整えています。どの業界向けでも、まずはお気軽にご相談ください。最適なソリューションをご提案します。"
— Hommer Zhao
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