5G、ミリ波レーダー、衛星通信——高周波技術の進化に伴い、PCB材料の選択がますます重要になっています。 「Rogers材は高いけど本当に必要なのか?」「FR-4でも何とかならないか?」 こうした質問を日常的に受けます。
この記事では、Rogers材とFR-4の電気特性、熱特性、コストを徹底比較。 どのような用途でRogers材が必要になるのか、どこまでFR-4で対応できるのか、 実務で役立つ選定基準を解説します。

"高周波設計者の方から『とにかくRogersで』というご依頼をいただくことがありますが、実は1GHz以下ならFR-4で十分なケースも多い。過剰スペックはコストの無駄遣いです。"
高周波基板プロジェクトの経験から
— Hommer Zhao
創業者・技術専門家FR-4とは

FR-4基板の断面構造
FR-4の特徴
FR-4(Flame Retardant Type 4)は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂を基材とした 最も広く使われているPCB材料です。低コスト、良好な機械特性、加工性の良さから、 電子機器の80%以上がFR-4を使用していると言われています。
FR-4の電気特性
| 特性 | 標準FR-4 | 高Tg FR-4 |
|---|---|---|
| 誘電率(Dk) | 4.2〜4.7 | 4.0〜4.5 |
| 誘電正接(Df) | 0.02〜0.025 | 0.015〜0.02 |
| ガラス転移温度(Tg) | 130〜140℃ | 170〜180℃ |
| 熱伝導率 | 0.3 W/m·K | 0.3 W/m·K |
FR-4のメリットと限界
- メリット:低コスト、入手容易、加工性良好
- 限界:高周波では信号損失が大きい、誘電率が周波数で変動
- 適用周波数:一般的に1GHz以下が推奨
Rogers材とは

各種Rogers材を使用した高周波基板
Rogers材の特徴
Rogers(ロジャース)材は、米国Rogers社が製造する高周波用PCB材料の総称です。 PTFE(テフロン)系やセラミック充填樹脂系など、用途に応じた多様な製品ラインがあります。 低誘電率・低損失の特性により、高周波信号を効率良く伝送できます。
なぜRogersが必要なのか
高周波になると、FR-4では以下の問題が顕在化します:
- 誘電損失の増大:信号エネルギーが熱に変換され、減衰する
- 誘電率の変動:周波数や温度で誘電率が変化し、インピーダンスが不安定に
- 信号の歪み:誘電正接が大きいと、信号波形が劣化
誘電率と誘電正接とは?
誘電率(Dk):電気信号の伝搬速度と波長に影響。低いほど高速・短波長。
誘電正接(Df):信号エネルギーの損失に影響。低いほど損失が少ない。
高周波回路では、両方とも低い材料が望ましいです。
重要な電気特性の比較
| 特性 | FR-4 | RO4350B | RO3003 | RT/duroid 5880 |
|---|---|---|---|---|
| 誘電率(Dk)@10GHz | 4.3 | 3.48 | 3.0 | 2.2 |
| 誘電正接(Df)@10GHz | 0.025 | 0.0037 | 0.0013 | 0.0009 |
| 熱伝導率(W/m·K) | 0.3 | 0.69 | 0.5 | 0.2 |
| CTEz(ppm/℃) | 60 | 32 | 24 | 237 |
| 加工性 | ◎ | ○ | △ | △ |
| コスト(FR-4=1) | 1 | 5〜8倍 | 10〜15倍 | 15〜20倍 |

"RO4350Bは、Rogers材の中でも最もバランスが良い材料です。FR-4に近い加工性を持ちながら、高周波特性も優秀。迷ったらまずRO4350Bを検討することをお勧めします。"
— Hommer Zhao
創業者・技術専門家Rogers材の種類
主要なRogers製品シリーズ
| シリーズ | Dk | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| RO4000シリーズ | 3.3〜3.6 | FR-4に近い加工性、コスパ良 | 汎用RF、アンテナ |
| RO3000シリーズ | 3.0〜10.2 | セラミック充填、低損失 | ミリ波、衛星通信 |
| RT/duroidシリーズ | 2.2〜10.2 | PTFE系、最低損失 | レーダー、航空宇宙 |
| TMM/TMM3シリーズ | 3.0〜6.0 | セラミック充填、安定性 | 車載レーダー |
用途別の推奨材料
- 5Gアンテナ(Sub-6GHz):RO4350B、RO4835
- ミリ波(28GHz、77GHz):RO3003、RT/duroid 5880
- 車載レーダー:RO3003、TMM3
- 衛星通信:RT/duroid 5870/5880
- 汎用RF(1〜6GHz):RO4350B、RO4003C
周波数帯域別の性能
材料選定の最大の判断基準は「動作周波数」です。 以下は周波数帯域別の推奨材料です:
| 周波数帯 | 推奨材料 | 備考 |
|---|---|---|
| DC〜500MHz | FR-4 | コスト優先ならFR-4で十分 |
| 500MHz〜1GHz | FR-4 or 低損失FR-4 | 用途次第、シビアでなければFR-4可 |
| 1GHz〜6GHz | RO4350B, RO4003C | 5G Sub-6、WiFi 6E |
| 6GHz〜24GHz | RO3003, RO4350B | 衛星通信、レーダー |
| 24GHz〜77GHz | RO3003, RT/duroid | ミリ波5G、車載レーダー |
| 77GHz以上 | RT/duroid 5880 | 航空宇宙、研究用途 |
FR-4で粘れる限界
設計の工夫(短い配線長、適切なグランドプレーン設計)により、 FR-4でも1〜2GHz程度まで対応できるケースがあります。 コストを抑えたい場合は、まずFR-4で試作し、性能を評価することをお勧めします。
熱特性の違い
高周波回路では、パワーアンプなどの発熱部品を実装することが多く、 熱特性も材料選定の重要な要素です。
| 特性 | FR-4 | RO4350B | RO3003 |
|---|---|---|---|
| 熱伝導率 | 0.3 W/m·K | 0.69 W/m·K | 0.5 W/m·K |
| Tg | 130-140℃ | 280℃以上 | 280℃以上 |
| CTE(Z方向) | 60 ppm/℃ | 32 ppm/℃ | 24 ppm/℃ |
| はんだ耐熱性 | 標準 | 優秀 | 優秀 |
Rogers材は一般的にFR-4より高いTg(ガラス転移温度)を持ち、 リフローはんだ付けでの熱ストレスにも強いです。 発熱が大きい用途では、メタルコア基板との 組み合わせも検討してください。
コスト比較
Rogers材はFR-4に比べて高価です。材料費だけでなく、 加工難易度による製造コストの違いも考慮が必要です。
| 材料 | 材料コスト | 加工コスト | 総コスト(FR-4=1) |
|---|---|---|---|
| FR-4 | 1 | 1 | 1 |
| 低損失FR-4 | 1.5 | 1 | 1.3 |
| RO4350B | 5〜8 | 1.5 | 5〜10 |
| RO3003 | 10〜15 | 2 | 10〜20 |
| RT/duroid | 15〜20 | 2.5 | 15〜25 |

"Rogers材のコストは確かに高いですが、高周波性能が必要な用途でFR-4を無理に使うと、試作のやり直しや製品の性能問題でもっとコストがかかることがあります。最初から適切な材料を選ぶことが結果的に安上がりです。"
— Hommer Zhao
創業者・技術専門家ハイブリッド構造
コストと性能のバランスを取る方法として、「ハイブリッド構造」があります。 高周波が必要な層だけRogers材を使用し、その他の層はFR-4を使う方法です。
ハイブリッド構造の例
- 表面層のみRogers:アンテナパターン、RF回路を表面に配置
- 内層はFR-4:電源層、グランド層、低速信号はFR-4
- コスト削減効果:全層Rogers比で50%以上のコスト削減も可能
ハイブリッド構造の注意点
異なる材料を積層するため、CTEの違いによる反りやデラミネーション(層間剥離)のリスクがあります。 プリプレグの選定と製造条件の最適化が重要です。経験豊富な製造パートナーを選んでください。
材料選定ガイド
FR-4を選ぶべき場合
- 動作周波数が1GHz以下
- 信号損失がそれほど問題にならない
- コストが最優先
- 大量生産で単価を下げたい
Rogers材を選ぶべき場合
- 動作周波数が1GHz以上
- 低い信号損失が必要
- 安定したインピーダンス制御が必要
- 5G、レーダー、衛星通信などの高周波用途
まとめ
Rogers材とFR-4の比較について解説してきました。要点を整理します:
- FR-4:低コスト、1GHz以下なら十分な性能
- Rogers材:高周波用途で低損失、安定したインピーダンス
- RO4350B:Rogers入門に最適、コスパ良好
- ハイブリッド構造:コストと性能のバランスを取る選択肢
材料選定に迷ったら、まずは動作周波数と信号損失の許容値を整理してください。 当社では、用途に応じた最適な材料選定のアドバイスも行っていますので、 お気軽にご相談ください。HDI、フレキシブル、リジッドフレックスなど他の特殊基板については基板タイプ選定ガイドをご覧ください。 信頼できるパートナー選びにはPCB実装パートナー選定の10のチェックポイントが参考になります。

"高周波設計は材料選定だけでなく、基板構造、配線設計、グランド設計など、総合的なアプローチが必要です。材料の相談だけでもお気軽にどうぞ。設計段階からサポートします。"
— Hommer Zhao
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